やっとの事、事務所の前に戻ってきた茉姫は、ため息をついた。警官に交番へ連れてかれそうになったものの、何とか回避して、適当な服を購入できた。 「疲れた……というか、エルフって」 もしかしたら疲れてて、幻覚でも見たかもしれない。中に入ったらもういないかも。そんな事を思いながら、茉姫は事務所の中に入った。 「おかえりですの」 ルドルはお行儀よくソファーで座っている。茉姫はルドルの頭や体をベタベタ触った。 「なっ……何するですの!」 少し顔を赤くしながら、さっと茉姫から距離を取ったルドルが続ける。 「自分からするのは良くてもされるのは……ですの!」 とても人間らしい反応と手触りとで、現実と確信した茉姫は、買ってきた服の紙袋を差し出しながら言った。 「とりあえずこれ、下着はさすがに適当には選べないから」 「した……ぎ?」 不思議そうに、たどたどしく言葉を繰り返したルドルを見て茉姫は思う。そういう習慣がないのだろうか。エルフというのは、ゲームやアニメとかの創作物に登場する種族と、茉姫は認識している。未開人。森の中で暮らす、あまり人と接しない種族。実現しているとは思わなかったが。そういうのに当てはまる気がする。 「これからどうしよう」 茉姫は思わず呟いてしまった。袋を開けて、服を取り出して、着ようとしているルドルが動きを止める。 「いきなり申し訳ないですの……魔法も封じられ、記憶を消して、立ち去る事も出来ないですの、言語理解の魔法だけは、最後にジジィどもにかけられて……魔法が解ける事はないから、それだけは安心ですの、でも本当にこれからどうすればですの」 ルドルがしょぼんとした表情を浮かべる。自業自得だと追い出すこともできるけど、茉姫の頭に一瞬そう過った。でもその考えを笑って一蹴する。 「いきなり笑ってどうしたですの?」 「ううん」 私は探偵だ。トラブルは大歓迎。茉姫はそう思う。 「これも何かの縁だ……うちに置いてあげるよ」 ルドルの表情がぱぁと明るくなる。 「本当ですの! ありがとうですの!」 「……珍獣ペットとしてね」 「キィー! 何ですの! この子猿! あなたの方がペットですの!」 そして取っ組み合いのケンカを二人は始めた。茉姫はルドルの、両頬を引っ張りながら思う。一人は寂しかったところだ、それに探偵と相棒はセットだしと。 ハイエルフなのに変態...
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